個人向け国債と債券で守りの資産をつくる:変動10年・固定5年・固定3年の使い分け
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個人向け国債(変動10年・固定5年・固定3年)の違いを数字で整理し、金利上昇局面での使いどころと、株式偏重ポートフォリオに債券を組み合わせる意味を具体例で解説します。
まず「守りの資産」って、何を守るのか?
結論から言うと、守りの資産が守るのは「資産額」だけじゃなくて「投資を続けるメンタル」と「生活の選択肢」なんですよね。株式が大きく下がった局面で、現金が足りずに安値で売る——これが一番もったいない。
じゃあ守り=現金だけでいいの?というと、正直なところ「インフレ」と「金利」のせいで、現金100%はジワジワ目減りしやすい。そこで候補になるのが、個人向け国債や一般的な債券(債券ファンド含む)です。
たとえば2026年春。コメ価格の高止まりや電気代の変動など、家計は「毎月の支出が読みにくい」状態が続きがちです(体感ありますよね?)。この手の局面では、家計のクッションを厚くしつつ、余剰資金の置き場も整えるのが効きます。家計側の整え方は定額減税の次にやる家計見直しが参考になります。
この先は、個人向け国債(変動10年・固定5年・固定3年)の違いを数字で整理し、金利上昇局面でどう使うか、株式偏重のポートフォリオにどう混ぜるかを、具体例で詰めます。新NISA・iDeCoの制度論には踏み込みません。
数字で見ると:個人向け国債3タイプの「性格」の違い
個人向け国債は、ざっくり言うと「日本国が相手」「最低金利がある」「中途換金のルールが明確」という点で、守りの資産として使いやすい設計です。
まずは比較表で、性格をつかみます。
| 種類 | 期間 | 金利のタイプ | 金利環境への強さ | 向いている役割 | 注意点 |
|---|---|---|---|---|---|
| 変動10年 | 10年 | 変動(半年ごと見直し) | 金利上昇に強い | 余剰資金の「準現金」置き場、長めの待機資金 | すぐ換金する前提なら手続きの手間はある |
| 固定5年 | 5年 | 固定 | 中立(上がると相対的に不利) | 使う時期が見えている資金(5年以内) | 金利が上がると「取り残され感」が出る |
| 固定3年 | 3年 | 固定 | 金利上昇に弱め(期間が短い分マシ) | 近い将来の支出予定、短期の資金置き場 | 期間が短いぶん利回りが伸びにくいことも |
ここで「金利上昇に強い/弱い」は、価格変動というより“機会損失”の話です。個人向け国債は、一般の市場で売買される債券(利付国債など)と違って、日々の時価で振り回されにくい。一方で、固定金利は買ったあと金利が上がると、新しく出る商品に比べて条件が見劣りしやすい。
TIP
「いつ使うお金か」で年限を決めると迷いが減ります。3年以内に使う可能性があるなら固定3年か現金、5年程度なら固定5年、使う予定が読めない余剰資金は変動10年、という整理が実務的です。
実例:教育費・車・住宅修繕みたいな「時期がズレる支出」に当てはめる
- 3年以内に車検+買い替えの頭金を作りたい → 固定3年(または現金)
- 4〜5年後に子どもの塾・受験費用が増えそう → 固定5年
- 使う予定はないが、株が下がったら買い増し資金にしたい → 変動10年
ぶっちゃけ、守りの資産って「増やす」より「使える状態を維持する」が大事。だから“期間”の考え方が最優先です。
金利上昇局面での使いどころ:固定より「変動10年」が効く場面
2024年に日銀がマイナス金利を解除して以降、金利のある世界に戻った、という空気が強まりました。2026年時点でも、家計側の体感は「預金金利も少しは付くけど、物価上昇もあるし、安心しきれない」あたりが現実ラインだと思います。
この局面でのポイントは2つです。
1) 金利が上がるほど「固定」は買い時が難しくなる
固定3年・固定5年は、買った瞬間に条件がロックされます。金利がさらに上がると、新規発行のほうが魅力的に見える。これが心理的なストレスになりがち。
一方で、固定の良さは「将来の受け取りが読みやすい」こと。使う時期が決まっている資金には、読みやすさが勝ちます。
実例:3年後に100万円を使う予定があるケース
- 現金:いつでも使えるが、インフレで実質価値が目減りしやすい
- 固定3年:使う時期までの“置き場”として、値動きなしで管理できる
ここは「増やす」より「減らさない・ブレない」が価値です。
2) 変動10年は「金利上昇の恩恵」を取り込みやすい
金利が上がる局面で、変動は半年ごとに利率が見直されるため、固定より置いていかれにくい。守りの資産を“準現金”として持ち、必要なら株式の買い増し原資にする——この動きと相性がいい。
IMPORTANT
金利上昇局面で「債券は損」と一括りにされがちですが、それは主に“時価で売買する長期債”の価格下落の話です。個人向け国債は設計が違い、少なくとも「守りの置き場」としてのストレスは小さめです。
株式偏重ポートフォリオに債券を混ぜる意味:リターンより「行動」を安定させる
数字で見ると、長期では株式の期待リターンが高いのは事実です。だから株式偏重になるのも自然。ただ、問題は“下落局面で耐えられるか”です。
ここで債券(個人向け国債を含む)を混ぜる意味は、主に3つ。
- 生活防衛費の次の「第2のクッション」になる
- 株が下がったときに、売らずに済む(取り崩し回避)
- 株が下がったときに、買い増しの原資になる(行動の自由度)
この「買い増し原資」って、言うのは簡単なんですが、現金が家計の突発支出で削られると実行できない。2026年春みたいに食費や電気代がブレる局面だと、なおさらです。家計の変動を抑える工夫としては、生活側の話になりますが、円安と電気代の関係やコメ価格の高止まりと家計防衛のように「何が上がりやすいか」を知っておくのも、投資の継続に効きます。
実例:株式90%の人が、下落で投資をやめるパターン
- 株が-25%
- 生活費の予備が薄い
- 突発の医療費や家電故障が重なる
- 「もう怖いから投資停止」になりやすい
ここに守りの資産(国債など)があると、投資を止める確率が下がる。私はこれが一番大きいと思っています。リターンの最大化より、「退場しない設計」のほうが最終成績に効くことが多いんですよね。
実務で迷わない「守りの資産」設計:3つの箱に分ける
私がよくやる整理は、守りを1つの塊にしないこと。用途で箱を分けます。
箱1:生活防衛費(現金)
- 目安:生活費の6〜12か月分(家族構成・雇用形態で調整)
- 目的:失業・病気・介護・引っ越しなど、即時対応
箱2:近い将来の支出(固定3年/固定5年+現金)
- 目安:1〜5年以内に使う可能性が高いお金
- 目的:教育費、車、住宅修繕、税金(住民税・所得税の不足など)への備え
箱3:待機資金(変動10年)
- 目安:「使う予定はないが、株が大きく下がったら使いたい」資金
- 目的:メンタル安定+買い増し余力
WARNING
「全部を変動10年に置けば安心」とは言い切れません。生活防衛費まで国債に寄せると、いざという時の即応性が落ちます。守りの資産は“安全性”だけでなく“流動性”もセットで考えるのが大事です。
ミニ試算:現金100万円を「箱2/箱3」に分けると何が変わる?
たとえば、現金100万円のうち
- 30万円:家電買い替え等の近い支出(箱2)
- 70万円:待機資金(箱3)
に分けると、「使うお金」と「使わないお金」が頭の中で分離します。これ、実はこれだけで株式の値動きへの耐性が上がります。投資判断が“家計の不安”に引っ張られにくくなるからです。
投資信託・ETFの債券と、個人向け国債の違い:価格変動のストレスが別物
債券の話で混乱しやすいのがここ。個人向け国債と、債券ファンド(投資信託やETF)は別物です。
| 項目 | 個人向け国債 | 債券ファンド(投信/ETF) |
|---|---|---|
| 価格(基準価額)のブレ | 小さい(時価で見えにくい) | 金利上昇で下がりやすい |
| 目的 | 守り・待機資金・予定資金 | 分散投資の一部、運用によるリターンも狙う |
| 金利上昇局面 | 変動10年はついていきやすい | 既存債券の価格下落が出やすい |
| 管理の分かりやすさ | シンプル | 期間(デュレーション)や為替など要素が増える |
「守りの資産」を作る文脈だと、まず個人向け国債で“守りの土台”を作り、その上で必要なら債券ファンドを検討、が順番としては安全運転です。
実例:金利上昇で債券ファンドが下がったときの心理
- 「債券なのに減ってる…」で不安になる
- 株も下がっていたらダブルパンチ
- 結果、両方売ってしまう
この行動リスクを避けたい人ほど、個人向け国債の“分かりやすさ”が効きます。
方針:迷ったら「固定は予定、変動は待機」で組む
最後に、今日から使えるルールに落とします。
- 固定3年:3年以内に使うお金の置き場(予定資金)
- 固定5年:4〜5年以内に使うお金の置き場(予定資金)
- 変動10年:使う予定が未定の余剰資金(待機資金)
そして、株式偏重の人ほど「待機資金」を作る価値が大きい。リターンを上げる魔法ではないけれど、暴落時に“売らないで済む”確率を上げる。数字で見ると地味でも、長期ではここが効きます。
私自身、相場が荒れた時に一番助かったのは、完璧な銘柄選びじゃなくて「現金+国債で、行動がブレない仕組み」でした。結局、長期投資はテクニックより継続が勝つ。守りの資産は、その継続を買うためのコストだと思っています。
佐藤 陽斗
投資ストラテジスト
佐藤陽斗は、証券会社のリサーチ部門で10年以上の経験を持つ投資ストラテジストです。新NISAやiDeCoを活用した長期・分散投資を専門とし、初心者にもわかりやすい資産形成の解説に定評があります。データに基づいた中立的な視点で、個人投資家の意思決定をサポートしています。
資格・経歴: 証券アナリスト(CMA)